JD COLUMN

ジャパンデンタルのコラム

2020.04.11 コラム

私の考える歯科医院経営の要諦について

㈱ジャパンデンタル営業本部
営業部長 田中 弘之
 
私は㈱ジャパンデンタルに入社し約30年歯科医院開業の現場に携わって参りました。この長い経験の中で得た、「歯科医院経営とは何か」と言う事を改めて考えた時に、歯科医院の経営は時の流れとともに変わり、その主眼とする事も変わるものだと感じている次第です。
 
 
 

1.開業準備~5年前後まで・・・開業エリアでの存在感アピールと経営安定化

開業地の設定・決定に関しては、流動人口が多い立地条件(駅前・商業施設内、その付近など)を選ぶ場合は、近隣の競合歯科医院も多くなります。そのため開業当初、来患数・収入面で苦労する可能性はあると思いますが、経験上は逆にしっかりと軌道に乗せる事が出来れば、どんどん伸びる市場特性と感じます。
 
流動人口が少ない立地条件(住宅地内・幹線道路沿いなど)を選ぶ場合は、近隣歯科医院も少なく、開業当初から来患数・収入面良好なケースが多いと思われますが、逆に商圏が限定されている関係から収入面の伸びには限界があると感じます。主だってこの期間に考えなければならないコンセプトは以下の通りです。
 
 

(準備段階)

①新規開業時から軌道に乗り安定期に入る5年間程の診療方針、経営戦略。
→どういう歯科医院にしたいのか?
 
②Dr自身が考えるターゲット患者が競合歯科医院と重複しないエリアを開業に設定。
→近隣歯科医院の院長の経歴や得意分野をホームページ等で検証
 
③Drの得意分野が市場環境と合致するのか?
→矯正・口腔外科・インプラント・審美・予防・その他
 
④スタッフ確保(衛生士・助手・受付)
→経験的に、開業段階で衛生士採用が上手く行かない場合は、以後の採用もなかなか上手く行かないケースが散見されます。スタッフが就職に際して何を重要視するか地域柄も含め十分に検討する必要があります。

 
 
(開業以降)
⑤来患者状況の把握
患者はどの地域から来ているのか?来患者の年齢構成や保険種別はどうか
?患者の男女別比率はどうか?
レセプト点数の検証、自由診療収入の状況
診療体制の整備~患者の不満への理解と対応ができる歯科医院なのか?
か強診の認可診療所とするのか?(保険収入に大きな影響ある)
 
など経営に関して考えることは山の様にあります。またこうした内容について思わしくない状況であった場合更に様々なことを考えなければなりません。

来患エリアの把握(思わしくない来患状況エリアへの対策)
・診療所内の対応等に問題ないのか?(患者への応対等)・
何が一番の原因なのかの究明が必要です。
 
この時期の私のコンサルティングは上記を総合的に判断し、Drに常に危機感を持ってもらうような伝え方をしています。
 
 

2.5年~10年前後くらいまで…将来に向けての資金蓄積

この時期は中期的な診療方針・経営戦略を考える必要があります。開業後6年~7年経過し大きな金額の設備投資の減価償却が終わります。借入金の返済期間にもよりますが、元金の返済割合が増え、支払利息額も減額します。この為に課税所得が一気に上がり税負担が増加するからです。
 
逆にDrは所得金額の上昇から経営状況が大幅に良化したと錯覚する方もおられるかもしれません。また、この頃には家族構成にもよりますが、子供の教育費を含めて生活費は年々上昇し、医院経営や家計経営に疎いDRはキャッシュフローを把握せず資金ショートに至るケースも出てきます。「どこまでの規模」の「どんな診療所」を目指すのか?を検討すべき時期にもなりますが
 
①勤務医雇用により一層の増収を目指す。が、年々優秀な勤務医確保は難しくなります。
 
②ユニット増設による大規模診療所を目指す。しかし診療所が大規模になれば将来的には親族以外での診療所の継承者を見つけるのが困難になるかもしれません。
 
③医療法人化等の検討
医療法人化のメリット・デメリットを十分に理解し考察する必要があります。
節税面だけをメリットに考え設立すると失敗に至るケースが多いと感じます。
収入が減少するとメリットが少なくなることも考えられます。医療法人の設立は
法人運営による対外的な信用力の高まりを第一のメリットとして考えるべきです。
 
④純初診患者が減少した、あるいは増えない場合は、本当にその時代に合った歯科医院なのか?を検討する必要があると思います。
 
⑤また、時代に合った歯科医院へのリニューアルが必要な場合の自己資金は確保出来ていますか?
 
⑥生活費の検証が重要になる時期だと思います。
自宅を購入したくなる時期です。資金調達はし易い時代ですが、果たして返済負担に耐えられるのか?を検討しておく必要があります。この時期は子供の教育費が増加する時期とも重なり、生活費が年々上昇するだろうと思われるからです。
 
税理士先生が生計費等のキャッシュフロー計算まで行ってくれる方は少ないと思われ、Dr自身で十分検証し資金繰りの悪化を招かない判断をすべき大事な時期だと思います。
 

3.10年~20年前後くらいまで…大規模なリニューアルや経営方針の見直し

                  
①大規模な診療所のリニューアルが必要となる時期かもしれません。
内外装の大規模改装・ユニットの入替等、必要資金も多額となりますが、この時期に収入が減少傾向等で必要なリニューアルも行えない状況であった場合には、更に収入減少に歯止めがかからず悪循環に陥る事があります。
 
②将来、良い状態で医業継承する為には、リニューアルは必要不可欠であり、悪循環を回避しておく事が重要だと思います。
 
③「子供を歯科医師に」と願う先生も多いと思いますが、学費や仕送り等の必要資金額の検証は十分すべきです。中途で資金が途絶えると皆が不幸になるかも知れません。
 
④将来の医業継承を考える時期となり、子供、親族等で継承者が見当たらない場合に、どう対処していくのか十分検証し方向性をある程度決定すべき時期だと思います。

 
 

4.20年以上・・・リタイア時期

 
①借入金の返済は終了しているか?
または終了の目途はたっているか?如何でしょうか?
 
②老後資金確保~この時期に考えても遅いのですが、「前もって確保」出来ていたでしょ
うか?

 
(個人立)小規模企業共済掛金・満期返戻型生命保険・預貯金・不動産等の保有 など
(医療法人)退職金規程に基づく退職金支払いの可否
 
様々なライフステージに応じ、わたくしのこれ迄の経験に基づき記載してみました。もちろん、記載出来ている内容が全てとは思いませんし、これからの時代に合わない内容もあるかも知れませんが、先生方の豊かな歯科医師人生を追い求め書かせて頂きました。

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