JD COLUMN

ジャパンデンタルのコラム

2024.08.19 コラム

自分の歯科医院経営について把握されていますか

入江㈱ジャパンデンタル 仙台営業所長
熊谷 貴弘
 
個人立の先生方は3月に確定申告を終えて、ご自身の歯科医院経営実態について把握されましたでしょうか。先生方にとって確定申告書は毎年の成績表となりますので、しっかりと把握されている先生もいらっしゃれば、棚に並べられたままで見ていない先生もいらっしゃるかと思います。
 
自分の歯科医院の経営実態を把握する事は、歯科医院経営を成功させるための必須条件です。先生方ご自身の歯科医院経営について、この機会にぜひご一緒にお考えください。
 
 

1.歯科医院経営の実態を知る

令和5年11月24日、厚生労働省から第24回医療経済実態調査(令和5年実施)が公表され、各項目の前回実施(令和3年)比較は以下【表1】【表2】の結果となりました。

令和5年実施(令和4年実績)の医業収益は前年令和3年実績と比較して772千円の減額、コロナ前の令和1年実績との比較では187千円の増額とわずかな動きで、医業収益は過去4年間でほぼ横ばいの状況となっています。
 
一方で、医業・介護費用は令和1年以降の過去4年間で1,836千円の増額となっており、医業・介護費用増加により損益差額は過去4年間で1,649千円の減額となっております。つまり、医業収益が横ばいであるにもかかわらず、医業・介護費用は増額しており、損益差額は減額しているということです。
 
実際にご自身の歯科医院の損益差額から税金支払い、借入返済等を行っていく必要があり、残った分が生計費となります。今後も上記傾向が続くとなると、何らかの対策が必要になってくるのではないでしょうか。そのためにも先生方のご自分の歯科医院収益はどうか、収益増減の要因となる医業・介護費用支出に問題ないかについて、毎年確定申告書を見て、また実態調査のデータとも比較して確認することが必要であると考えます。

過去4年間で費用増額となっているのは、給与費とその他医業費用の項目となります。その他医業費用に含まれる項目としては、福利厚生費、消耗品費、水道光熱費、賃借料、固定資産税、支払利息、雑費等になります。
 
給与費について、過去4年間で827千円の増額となっております。給与費に関しては、令和6年度歯科診療報酬改定概要の「重点課題・具体的方向性の例」として医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組という記載があります、人材確保や賃上げ等への対応という事で今後も給与費は増加傾向になると考えられ、下記3.歯科医院経営の問題点を知る②(医業費用)で改めて記載致します。
 
その他の医業費用についても給与費同様、過去4年間812千円の増額となっております。令和3年実施時に項目として記載がなかった水道光熱費に関して、令和5年実施から記載されておりますが、令和3年実績は666千円、令和4年750千円と、前年比較で84千円の増額、金額伸び率にして12.6%の上昇となっております。増額要因としては、ロシア・ウクライナ戦争や円安による輸入価格の上昇等、令和3年頃から原油価格等の燃料費高騰による影響があったためと考えられます。
 
一方で原価費については、過去4年間で2,570千円の減額、前年比較でも370千円の減額となっています。
では、先生方ご自身の歯科医院経営を年度時系列でみていった場合、売上はどうだったのか、損益差額はどうだったのか、資金繰りはどうだったのか、ご自身で分析されましたでしょうか。
 
確定申告書・決算書、月次試算表を基に自身の経営実態を知る、分析を行う事は、今の経営状態が良いのか、悪いのかを客観的に見る事により、今後の歯科医院経営を行っていく上で、問題点は何か、改善は必要か、改善するための対策をどうするか、歯科医院の実態・問題点を明確にすることにより早期に対応する事ができます。
 
 

2.歯科医院経営の問題点を知る①(売上業績)

歯科医院全体の実態を知る事で見えてくる問題点として、売上業績、医業費用がどうだったのか、業績の良し悪しは外的要因によるものか、内的要因によるものか、分析が必要だと考えられます。
 
例えば、売上が低迷気味だとするならば、売上業績を左右するのは患者数であり、保険診療、自由診療、訪問診療等、各歯科医院の診療スタイルにより、患者数の考え方はそれぞれ違いがありますが、先生自身の診療スタイルにあった患者数なのか、目標としている売上をあげられているのか、患者情報については、日別・月別レセプト内容によりレセプト分析を行い把握する事が出来ます。
 
レセプト分析における項目としては、収入合計、患者数、診療日数、レセプト枚数、レセプト点数、初診・再初診数、継続患者数、保険一回あたり点数、レセプト点数、レセプト日数、一日あたり患者数、終了患者数・終了率と項目が分かれております。
 
重要視する項目は、新規開業、既開業(成長期、成熟期)の先生方では、それぞれ違いがあります。新規開業の先生方であれば、初診数、レセプト枚数、一日あたりの患者数を重要視しながら、診療を行っていくと考えられます。実際の患者数、診療日数、来患対象エリアは、開業時の計画と比較し予定通りなのか、そうではなかったのか検証が必要です。
 
既開業の先生方の場合は、収入、レセプト枚数、患者数はある程度安定してきた中で、更に売上を伸ばすために設備投資を行い患者数増加と同時に増収を図るのか、インプラント、矯正診療等、患者さんのニーズに合わせ自由診療割合を増やし増収を図るのか、来院患者の状況を把握する事で拡大路線或いは現状維持で良いのか、今後の歯科医院経営計画を策定する上でレセプト分析も重要であり、問題点を知るうえで必要な指標であると考えます。

 
 

3.歯科医院経営の問題点を知る②(医業費用)

医業費用についても問題点について実態を把握する事が重要になってきます。医業費用部分の一番の問題点は、歯科衛生士・歯科助手の人材確保ではないでしょうか。
 
スタッフ採用について、多くの先生方が実感されていると思いますが、スタッフ募集を行っても面接希望者も少なく、募集から数か月面接希望者0人、歯科衛生士募集時の給与設定も高めの設定にしてもなかなか採用まで至らず、歯科衛生士不在のまま新規開業となる場合もあります。先生方ご自身で考えていた開業プランと違った場合の対策も考えておく必要があります。人材募集に関してもハローワークだけではなく、歯科専門の求人サイト、ウェブサイト、インスタグラム等SNS利用により様々な形で求人広告を掲載し募集を行う状況にあり、広告宣伝費と言う部分でも人材確保のための費用増加が考えられます。
 
厚生労働省から掲載された令和6年度診療報酬改定の基本方針の概要では、医療従事者の人材確保と賃上げを目指して特例的な対応が行われます。
 

①賃上げの概要

物価高騰や人材確保の影響を受け、医療分野のサービス提供や人材確保に対応するため、医療従事者の賃上げの実現を目指す。
 

②対象職種

病院、歯科診療所に勤務する歯科衛生士、歯科技工士その他の医療関係職種の賃上げのための特例的な対応として+0.61%の改定。40歳未満の勤務歯科医師、事務職員、歯科技工所等で従事する者も賃上げに資する措置として、+0.28%の改定を行い、医療従事者の賃上げに必要な診療報酬の創設及び初再診料等の引上げを行う。
 

③賃上げの具体的な対応

令和6年度にベースアップ+2.5%、令和7年度にベースアップ+2.0%の実現を目指す。
 
上記、診療報酬改定実施により、スタッフ給与の改善はされるものの、上記のベースアップ率は現状の人手不足を考えると最低限の目標かもしれません。実際にスタッフ人材(特に歯科衛生士)確保に繋がるのか、給与改善と同時に勤務時間等含め労働環境の改善も行いスタッフの採用、長期定着させることが今後の歯科医院経営の安定化に繋がっていくと考えられます。

 
 

4.歯科医院経営の実態把握への取組み

今回、「自分の歯科医院経営について把握されていますか」という題名で執筆させていただきましたが、未だに確定申告書、毎月・隔月に税理士或いは会計事務所から渡される試算表について、ご自身の歯科医院経営に関する資料であるにも関わらず、歯科医院経営の中身(特に数字的な部分)について無関心な先生がいらっしゃるのも事実です。
 
ご自身の歯科医院経営の中身には無関心ですが、税金の金額だけは気になるという先生もいらっしゃいます。なぜ税金が増えたのか、減ったのか、歯科医院経営の仕組みや、経営実態を把握せず、原因も分からずに毎年税金を納める事になり、経営実態を把握しないまま納税のために無計画に運転資金として短期借入を行い、資金繰りが悪化し経営難に陥ってしまうということがあり、先生方から相談を受け、歯科医院分析、アドバイスを行う事もあります。
 
経営が苦しい状況になる前に、日ごろからご自身の歯科医院経営状況について把握しておくことで、歯科医院経営の問題を早期に察知し、対策を講じることで安定した歯科医院経営を行っていけると思います。また、スタッフ採用・教育等含めた人件費増加、将来に向けた設備投資費用等、歯科医院経営実態を把握しておくことで早期に適切な対応を行えるのではないかと考えます。
 
先生方ご自身で経営を把握する事が困難だと思われたり、会計事務所または税理士から話しを聞いたけど良く分からなかった、数字は苦手だと不安に思われてる事があれば、是非一度弊社にご相談ください。弊社では開業をサポートさせて頂いた先生方へのコンサル業務として、レセプト分析、試算表分析、確定申告分析等、歯科医院経営に関わる分析を行いフィードバックする事で、先生方と一緒に歯科医院経営について考えながらお手伝いをしております。
 
歯科医院専門のコンサルティング・ファイナンス会社として、開業時から事業繁栄期、先生方のリタイアメントまで、ライフサイクルにあわせ長期的なサポートをさせていただきます。

以 上

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